ほんよみました:「遺書〜5人の若者が遺した最期の言葉〜」

 雑誌「三田文学」の秋季号で、25歳の若さにして自ら命を絶った青年の小説が載っているとのことで、書店をかけずり回って探したものの、見つかりませんでした。

 そのうち、文庫コーナーでふとであったのがこの作品。タイトル「遺書」の2文字が大きなショックとともに僕の脳裏に焼き付いてしまったのです。あっ、という瞬間に手はその本に伸びていました。文庫本だから読みやすいだろうと、そのまま手に取ってレジに向かいました。

 別にブルーになっているわけではありません。ただ、読んでみたくなったんです。新聞生活をやっていた効果はあったようで、スラスラと読めました。文庫ですら5日近くかかっていた僕が、この本ばかりは2日で読めたのでした。


 この本の構成は、5人の自殺した若者に関して、彼らが遺した遺書・彼らを自殺に追い込んだ背景の取材記事とインタビュー・遺族からの遺書への返信というもの。
 それぞれのストーリーを読むと、ただ切なくなりました。なぜこの若者たちは死を選択しなければならなかったのか。何が彼らをそうさせてしまったのか。
 取材記事から見えてきた彼らの優しさ。全ての責任は自分にあるのだと、苦しみをうちに抱え込んだ、その優しさが彼らを死に向かわせてしまったのではないかと思えてならないのです。それが切ない。さらに彼らの遺書からは、死への願望と生への執着、さらには優しさが見えてきました。誰にいじめられたかを書かなかった遺書、愛する妹を気遣う遺書、親に対する感謝と謝罪が込められていた遺書、「本当は生きたい」と書かれていた遺書。それが切ない。芽生えたのは、切なさから来るある種の罪悪感でした。文章を読むにつれて誰に対してでもなく申し訳なくなりました。

 ある人は、自殺は逃げだと言いました。確かに、死による苦しみからの解放、あるいは苦しみを与えた者に死を以て苦しみを示す行為、これは苦しみの根本の解決にはならないと思うのです。苦しみを内にに抱えずに他者に助けを求めることは決して逃げではない。それよりも、生きずに死ぬことによって急場しのぎ永遠に解決を迎えないことこそ逃げだと思う。少なくとも僕は生きることで立ち向かっていきたい。
 でもそんなのは、苦しみの外にいる人間の言うことで、実際に追いつめられてしまうとそんな言葉は通用しなくなるのだろうと思うのです。僕が苦しんでいたとき、立ち向かうなんて言葉は頭の中にありませんでした。だからこそ、なぜ彼ら5人が死に追いつめられてしまったのか、追いつめられる必要があったのかと思うと、切なくなるし罪悪感を感じるのです。
 亡くなった若者の周囲は皆それぞれに罪悪を感じる。結局誰が悪いと決めつけられない形になってしまうから、皆一様に罪悪を感じるのではないでしょうか。でも、周囲の人々のその後のストーリーを読むと、皆懸命に生きています。最愛の人を亡くし、苦しみと悲しみを背負いながら生きています。その姿が真に訴えたかったメッセージではないのでしょうか。著者は遺書を通じて生きることを訴えたかったのではないでしょうか。

 単に「自殺はいけない」と言うことを訴えている本ではないと思いました。苦しみを内に秘め続け、それをすべて表に出さないままに書かれた遺書たちから、僕たちは何か感じ取らねばならない。それぞれの主観で、彼らのメッセージを受け取るものであると思います。そう簡単に彼らや遺された人々の気持ちなど理解できるはずはない。それでも自分なりに、若くして命を絶った5人の最期のメッセージから何かを感じることに意義があると思います。少なくとも僕はまだ答えが見いだせていません。もっと考えを巡らせる必要性を与えてくれた本でした。

 そういえば、この本を読んで以前読んだ小説を思い出しました。三田誠広作「いちご同盟」。自殺願望のあった主人公は、病気を抱えた少女との出会いと交流・そして恋愛を通じて、生きる意味を見いだします。誰かに愛されたり、誰かを愛したり、その愛が感じれたときに、人は生きる意味を見いだすのでしょうか。ふとそう考えてみました。


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ほんよみました:「遺書〜5人の若者が遺した最期の言葉〜」” への3件のコメント

  1.  この記事とは全く関与していないけど。。
    全くの赤の他人ですが…、SFC合格おめでとう!!
     AOについてかなり参考になりました。僕は、来週の23〜25に、A方式第?期 環境情報学部へと出願する予定です。もう書類はほとんど大詰めにきていて、残るは別添資料のみです。
     そこで質問。どれくらい資料を作りましたか。また内容や「こうしたほうがいいよ」的なアドバイスもできたら><

  2.  なんか、深いですねぇ・・・俺は、生きていれば何かしらいいことがあると思います。

     福岡で中2の人が、いじめによって自殺しましたね。俺も昔、いじめにあった経験があるので他人事とは思えませんでした。しかし、そのときは辛かったですが、生きてて良かった〜って心から思います。死んだ事ないからわかりませんが、おそらく死んだらつまらないですよ。

    それから、俺のブログは近々移転しますので。また、お知らせしますね。

  3. HKさん

    遅くなりました、コメントありがとうございましたm(__)m

    ご質問の件ですが、このブログ上でお答えするよりもメールにて対応させていただければと思います。
    その方が細かいニーズにお応えできるし、まだブログ上で受験体験をまとめるだけの余力がないものですからm(__)m

    アドレスはこちらで↓
    blog@enshino.biz

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