それでもコミケに行くべきだった、と思う3つの理由

他に書きたいこともある最中、先んじてこの記事を書いたのは、鉄は熱いうちに打て、という感覚からです。何かと言うと、タイトルにある通り、コミケには行くべきだったと今更気づいた、ということです。

何度かFacebookやTwitterで告知していた通り、年末に開催された、世界最大の同人誌即売会・コミックマーケット91に行き、社会人雪合戦クラブチーム「湘南台冬将軍」として、文章中心の著作『雪合戦で女子が男子に勝つ方法』を頒布してまいりました。文章7割、クロスワード1割、4コマ2割という比率のうち、文章執筆を担当しました。わかる人にはわかりますが、ジャンルは「評論・情報」です。

サークルとして初出展というのはもちろん、私自身にとって人生初のコミケ参加です。なんとまさかの、開始2時間で完売(50部総捌け)、しかも大半の購買者が「湘南台冬将軍」関係者の知り合いというわけではない、という事態に。部数が少ないとしても初参加で完売は気持ちがいいものです。

で、改めて行って見て思ったのは、なぜこの楽しみをもっと前から感じなかったのか、という後悔です。以前の私は「そうは言っても自分は同人作品を買うほどまでにアニヲタではないし、そもそもあそこまでの熱意を持ってあの場にはいけない」と、食わず嫌いをしていました。今、それはもはや後悔ですし、そう思っていた私は浅はかでした。

それでもコミケに行くべきだった、今ならそう思える私なりの理由を3つ掲載します。


「評論・情報」は智の宝庫

コミケは完全に二次元の世界だとばかり思っていましたが、それは浅はかだったと気づいたのが、この「評論・情報」というカテゴリの幅広さです。正直言えば、当日はほとんどの時間を自ブースで過ごし、終わり2時間ほど前に30分程度この「評論・情報」ブースを見て回っただけなのですが、もはやこのジャンルだけでもお腹がいっぱい、というくらい、さまざまな同人本が販売されていました。

その多くが、各自が持つマニア的探求を文章や絵にしたためた作品たち。そしてその幅も非常に広く、法律・数学・職業・保育/育児・介護・スポーツ・食品・嗜好品・ギャンブルなどなど、もう挙げるのが面倒臭くなったのでやめますがそれほどまでに多種多様なジャンルにおいて、さまざまな論考をしています。なかには「ちょっとうさんくさいかも」と思うものがあるのも正直なところですが、なににせよ知的好奇心が旺盛な私としては「すごい」の一言につきます。

おそらくこれは、学会発表の楽しさに非常に近いものがある、あるいは私の場合、長らくを過ごした慶応SFCの研究発表会・ORFに非常に近いのだろう、と感じました。研究=極めるというプロセスは、科学的手続きを踏んでいる/いないに関わらず成立するし、ある種研究は「オタク」の成果であるのだろうなぁ、と。そして「オタク」は、他の「オタク」の紡ぎ出す智に対して興味を持つのだろうなぁ、と。そう考えれば、私が「これは面白い」と思うのも自分自身で納得です。

マーケティング思考で見ると面白い現象ばかり

なまじマーケティングリサーチ業界にいると、いろんなことをマーケティングの視点から見たり考えたりしてしまうわけですが、コミケという20万人もの人々が一堂に会す空間には、その視点から見たときに面白いと感じる現象が大量に存在します。おそらくこれは、会社員生活をするようになったからわかることです。大げさな言い方かもしれませんが、ニッチながらも総量としては大きい部分を占める、日本の消費動向をたった3日感で体感できる、と言えるかもしれません。

その片鱗は、りんかいせんの国際展示場駅を降りて地上のローソンに入った瞬間からわかります。以下の写真をご覧ください。

ENDO Shinobuさん(@enshino)が投稿した写真

元花王のWebマーケター・本間充氏に社内講演会を依頼した際に、氏が「もはや性年代属性では消費者像を捉えられない」という話の事例としてオタク文化を紹介し、そのなかで「コミケの際のローソンでは、本来一段陳列のおにぎりが三段になる」と言っていたので、早速それを確認してみました。確かに3段だったこと以外にも、多くの発見があります。

例えば、本来はお弁当が陳列されるはずの棚を、森永のウイダーインゼリーが占拠しています。同じく、エナジー系飲料も一つの棚を全部占拠しています。普通のコンビニでは絶対にありえない陳列です。この2つの陳列棚を使ってしまうと、お弁当とチルド惣菜を置くところがどこにもありませんが、そもそもコミケ参加者はレンジでチンを要したり、運ぶのにかさばったり、食べるのに手間がかかる商品は、このタイミングでは購買しません。また、朝早くから並ぶ=場合によっては徹夜、という人もいるため、エナジードリンクで戦に備えるというのは理にかなっています。

とまぁ、すでに長く書いていますが、実際に会場に入ってからもさらにマーケティング視点から面白いと感じることが多いと思います。なによりも、コミケ参加者は「エクストリーム消費者」であるということが言えると思います。私が出展していた「評論・情報」では、食品や製品のレビューを、しかもかなりニッチなレベルでしているのは本当に貴重な情報だと思います。「インサイトはエクストリームユーザーから」とどこかで聞きましたが、そうした人々がそれぞれに展開する商品への持論は商品開発や販売戦略に活かせることは間違いありません。

出展者として出していても、なかなか「あまり話しかけて欲しくない」系な一般参加者に対してどの程度声をかけて購買につなげるか、そもそも商品そのもののつくりやブースのつくりでどの程度目を引かせるか、どれほど来場者の心を掴むコンテンツ・タイトルを用意するか、など、頒布する上でも売る上での仕掛けをきちんとせねば、手厳しいエクストリーム消費者の購買を勝ち取ることができない、というのも学びです。これは、仕事に生きるなぁ、と。

表現するって、素晴らしい

お祭りごとは、基本的に「なかのひと」でいることが一番好きな人間なので、たんなる参加者では満足しない性格です。たしかにコミケの歴史をWikipediaで見ると、スタッフも出展者も一般来場者もみんな「参加者」である「マーケット」という思想があるわけですが、とはいえ自身が「表現者」として参加し、それが多くの人の手に取られるということは快感以外のなにものでもありません。編集さん、DTPさん、印刷さん、そして漫画家先生には大感謝ですが、やっぱり本文担当として自分の著作が世に放たれるのは本当に嬉しいものです。

思えば、どんなジャンル・種類の作品であれ、サークル出展者たちやレイヤーさん(及び写真家さん)は表現を楽しんでいるし、表現を誰かに見て欲しい・知って欲しいという欲求を最大限に発揮しているわけです。その欲求がなければこれほど多くのコンテンツが集まる会は成立しないわけです。それは純粋に素晴らしいことだな、と感じました。

たった50部で、しかも漫画家先生の描いた表紙と「雪合戦」「女子が男子に勝つ」というタイトルによって手に取ってもらえただけなのですが、しかし一人の執筆者としてこれだけ満足度の高い経験を得られてしまうと、「もっとこれをやってみたい」という創作意欲が湧いてしまいます。その創作意欲はもはや麻薬のようなものなのでしょう、それに侵された人たちがサークル出展するんだということを理解できました。


こんな楽しさを持っていたイベントだと早くから分かっていれば参加していただろうに、と思いながら、やっぱり我々湘南台冬将軍は、小出国際雪合戦の楽しさを広めたい。なので、次はノベライズに挑戦かな、と。

ENDO Shinobuさん(@enshino)が投稿した写真


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