デジタルデトックスのすすめ

ご存知の通りのインターネット中毒、つながってたい症候群、そんなめんどくさい性格であることは自覚済みです。ふとスマホを手にとっては、気になるけどどうでもいいことをググり、または意味もなくInstagram・Facebook・Twitterのタイムラインを見てしまう、というのがクセになっています。

これではいけない。

そう思って今年の10月に「デジタルデトックス」、すなわち、まったく通信デバイスを持たずに出かけるという休日の過ごし方をしました。案外ハマってしい、12月にも実施しました。その時のことを書きたいと思います。


事前準備をしよう

そもそもデジタルデトックスは、ある一定の長時間、デジタルデバイスを一切持たずに過ごすものです。でもそんなことは、20年前では日常だったし、今現在でもスマホを常に持っていないという人は一定数います。なので実際、デジタルデバイスを持たなくても生活は成り立ちます。ただ、外界の刺激=メディアのインプットを断つためには、できるだけ静かに、都会から離れた場所に行くことが大事です。そうなると、ちゃんとした準備が必要です。

そんなわけで最初にデジタルデトックスをする日を決めます。これはずばり平日がいいです。土日はどこにいっても人がいっぱいで、喧騒から離れて静かに過ごすということがまるで叶いません。有給休暇や夏季休暇、振替休日などを活用するのがよいと思っています。もちろん、その決行日には、一切の通信をしないということを事前に知らせておきましょう。

決行日を決めたら、行き先を決めます。できるだけ都会の喧騒から離れる。しかし、あまりにも遠出になるところはおすすめできません。移動も基本的には行き先と出発地の往復ですませた方がいいと思っています。電車やバスを使う場合には、ちゃんと終電を調べておかないと帰れなくなります。

そうそう、ある程度のお金も必要だと思います情報というインプットを遮断する代わり、いい体験やおいしいものを体に取り込むには、ある程度の出費が伴います。私はだいたい、1日あたりの予算は交通費も含めて1万円くらいを見ておきます。割とそれでも十分贅沢だと思っています。

じゃあ、デジタルデトックス中に何をするか、という話ですが、これも事前に準備をしておいた方がいいです。紙とペンだけで物書きをするのか、じっくりと時間をつかわないとできない考えごとをするのか。で、結局私は、文庫本を買いました。

さぁ、それでは、旅をはじめましょう。


1回目:10月・箱根天山湯治郷へ

ギリギリまで取得できなかった夏休みを10月中に使わねば。そう思い、いっそデジタルデトックスをしようと、平日の一日休を取得。もうこの時点で、行く場所は箱根湯本の天山湯治郷と決めていました。就職してから、日頃の働きへのご褒美として日帰りで温浴に行くというのをよくやっており、その場合は決まって天山湯治郷に行きます。

なにがそんなにいいのかというと、源泉掛け流しの野天風呂という時点で他にいうことナシなのですが、すぐ脇を流れる須雲川のせせらぎをきちんと聞けるように、館内は静かに過ごすよう雰囲気がつくられています。おやすみどころは本当に静かに体を横にすることができ、せせらぎの音の中でリラックスした睡眠をとることができます。お食事どころは、滋養料理のレストランと、温泉しゃぶしゃぶのレストランの2種類があります。行くなら絶対平日で、なぜなら岩風呂中心の「天山」という施設と、檜風呂の「一休」という施設を「はしご券」で行き来することができるからです。

そんなわけで、地元の駅を出て新宿に向かい、新宿駅で駅のロッカーに余計な荷物とスマホとタブレットを預け、デジタルデトックスのスタートです。せっかくの贅沢だから、と早速ロマンスカーに乗り、箱根を目指します。湯本の駅から天山湯治郷までは、旅館循環バスで。着いたら早速風呂へ、いったん上がってコーヒーをたしなみ、また風呂へ。再度上がったら、今度ははしご券を使ってお風呂だけの「一休」でせせらぎを聞きながら入浴。「天山」に戻って、夕食は奮発して温泉しゃぶしゃぶ。温泉水を使ったしゃぶしゃぶで腹を膨らましたら、ちょっと休んで最後のひとっ風呂。滞在7時間ほどの間に実に3時間は風呂に浸かっていました。

行きの車中や風呂上がりに読んでいたのは、山田ズーニーさんの『「働きたくない」というあなたへ』。いつだったか、上野駅の文具屋angeで見かけてジャケ買いした本です。根っからの山田ズーニー信者なので手に取った、というのはもちろん、ちょうどその頃、ただ漠然と「働きたくない」と感じていた時期だったことも、読もうと思ったきっかけでした。読者からのメッセージに基づいて綴られるエッセーでは、結局、なんとなく怠惰になっていた自分と同じような思いを抱える人が多いんだ、ということに気づきました。

ただただ、お湯に浸る、ということだけに徹し、湯に浸かりながら、例えば仕事を振り返るとか、新しいアイディアを思い浮かべるとか、決してそういうことをしたわけではありません。ただ、デジタルデバイスをまったく持たないということで起きた心境の変化というべきものは確実に存在するので、それは2回目の記載の後に。


2回目:12月・トスラブ館山ルアーナへ

案外、デジタルデトックスはおもしろいものだと気付いてしまい、消化が求められた有給をつかって、今度は1泊のデジタルデトックスに挑戦しました。決行日が決まった後に行くことを決めたのは、弊社で加入する健康保険組合の保養所である、トスラブ館山ルアーナ。なんと1泊2食付き(しかも夕食は魚介を中心としたコース料理)で5000円以内。それでいて、おひとりさま宿泊でもツインルーム(最大4名まで収容できる)に通してもらえるので、ひとり旅特有の寂しささえなんとかできれば、この上ない贅沢な「なにもしない」時間を過ごせます。

朝に仕事をちょっとして、そのまま木更津にいく高速バスに品川から乗り込み、午前中は木更津アウトレットに行ったのですが買うものもなく、そのまま木更津から内房線に乗って館山を目指しました。快晴のさなか、単線になっていく内房線が東京湾の脇を通っていくと、静かな水面が見えてきます。その時点で落ち着いた旅情を感じることができます。到着してチェックイン、すぐに温水プールで体を動かし、もうそろそろと思った頃に陽が沈み始めたので、露天風呂から日の入りを見る贅沢。夕食後にも入った露天風呂は、一転して満天の星。

広い部屋でしていたことは、ひたすら読書でした。本当に読むのが遅い人間ですが、1泊2日のうちにちゃんと読み切ることができた、村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。誰かの心の中にひっかかったことが時間を超えて解けていく物語の理解には、無駄なノイズがない状況が必要だったと思います。

1泊した翌日は、年の貯まった疲れを流すために人生初めてのエステを受けましたが、恐ろしく気持ちがいい。これは本当にはまってしまうと思うほどでした。その後はもう一度プールで泳いでから帰りました。結局は、単にリゾートで「なにもしない」をしただけの2日間でした。


2度のデジタルデトックスを経てわかったこと

デジタルデトックスを経てわかったことは、「結局、世界は何も変わらない」ということです。

携帯電話→スマホと進化する中で、常に誰かとつながれる状態を断ち切ると、いざという時の連絡が自分のもとに届かなくなるわけで、それは非常に焦ってしまいます。1回目のデジタルデトックスの際に、行きのロマンスカーのなかで私の心境を取り巻いたのは、家が突然火事になっていないか、86歳になる祖母が突然倒れたりしていないか、ということでした。ああ、祖母に対してつんけんした態度を取って家を出てきてしまった、それが最期になったらどうしようか。そんな不安に苛まれながら、それが次第に、しかしつながっていても、事は起きてしまうものだと、徐々に感情は落ち着いてきます。で、帰ってみると、結局、何も起きないのです。

あるいは、という話ですが、それこそ綺麗な夕陽を拝んだ時、これはインスタグラムにアップしたいと思うわけですが、デジカメも出さなかったので記録に残す事はできません。しかし、晴れていれば毎日夕陽は沈むわけですし、星は輝くわけですし、そう考えると、「これは記録したいな」と思うのはこちら側の都合であり、結局は世界は変わっていないのです。

常につながっていることに依存すると、ある意味無意味な安心感に浸ってしまったり、あるいは感覚を研ぎ澄ます作業を怠ったりしてしまいます。そんななかで、デジタルデバイスから解き放たれることで感じる、結局自分という人間の周りでは、世界は変わっていないということは、戻ってからのインプットをよりシャープなものにしてくれる感覚があります。

あくまでこれは私の感じた感覚ですから、みなさんがどう感じるかは皆さん次第です。ぜひ、みなさんも「デジタルデトックス」してみませんか?

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