1ヶ月も試行錯誤して、ようやくプリントに採用するフォントを見つけた

中学1年生の英語を担当して1ヶ月がすぎたが、じっくりと時間をかけて、アルファベット指導からヘボン式ローマ字、そして単語指導へと、自転車操業的にプリントを作りながらえっちらおっちらやっている。

そこで無駄にこだわりをもってしまったのが、プリントに採用するフォントである。些細なようでとても重要な問題だ。

結論から言おう。僕は月300円払ってでも、UDデジタル教科書体手書き用欧文を使うことに決めた。ありがとう、MORISAWA BIZ+。ついでに欲を言えば、全教員のPCに一括でライセンシングしてほしい。


いろいろ探した。先達は、Comic Sansを用いていた。Comic Sansは、Google検索すると真っ先に「ダサいフォント」と評されるページが出てくるし、私もダサいと思っていた。だが、使うにはそれ相応の合理的な理由がある。実際に聞いてみたところ、「aが、筆記書体のaに近いから」というのが理由だった。なるほど、それは納得がいく。ただしComic Sansは一つだけ利用時に注意がある。大文字のYについては、中央の棒が垂直ではなく右側の斜め棒とつながっている状態になる。そこだけは注意が必要だ。

だがいきなりComic Sansを用いるのはちょっと都合が悪い。なぜなら、少しクセがあるフォントなので、それこそ書写のようなアルファベット指導時期には向かない。変な癖をつけさせるわけにはいかないし、それこそ均等間隔になっている4線ノートに配分しようとするとバランスが悪くなる。4線を卒業してからならいいが、均等配分4線をオブジェクトで作り、そこにテキストボックスでアルファベットを重ね合わせようとした際、上から1段目と2段目(授業では2階・1階・地下と指導した)の間隔が合わないのだ。

調べてみると、Sassoonというフォントがあることを知った。Rosemary Sassoonというデザイナーが、アルファベットの初学者向けにデザインした、アルファベットの手書きの学習用のフォントである。Jolly Phonicsという、英語の音とファルファベットの組み合わせを学習する教材においても、このフォントが用いられていることを知った。しかも無料で配布されている。「これだ!」と思ってダウンロードした。しかし残念なことに、これまた均等間隔の4線に合わない。

そもそも、均等間隔4線であるべきなのか、という議論はある。実際、文科省の英語ノート「We can」で採用されているアルファベット表をみると、上から数えて2線目と3線目の間(授業で私が言った1階)が、他の間隔(2階や地下)に比べて幅が広く設計されている。聞いた話によれば、この2・3線目の間が広い方が書き取りをしやすいとのこと。かんがえてみりゃそりゃそうだ。均等間隔のなかで「e」なんかはとても書きにくい。ならいっそ、作る教材を全部、「1階」だけ幅広にするか、とも考えた。しかしそうしてしまうと、今度は生徒たちが購入した4線ノートと異なってしまう。大半はいまだに均等間隔である。うぅむ、ここは均等にしよう、と思った次第だ。

ところで、学校で用いているPCはWindows 10なのだが、UDデジタル教科書体というフォントが標準で入っている。なんと、教科書体で、しかもUDだと。つまり教科書で用いられている書体だからまぁ概ね正しいと思って差し支えなかろうし、しかもUD=Universal Designだから誰でも見やすいだろうと。しかも少し丸っこくてかわいい。前職時代の終わり頃に、上司がよくPPTで使っていて、このフォントきれいだな、私も使いたいなと思っていたのだが、自分の社用PCがWin7で上司のがWin10だったから、使えなかった。いよいよ学校という職場でこのフォントが使えるぞ、これは見やすいぞと意気込み、以降すでに第4号まで発行している学年通信で用いている。

これだ、これを使おうと思ってUDデジタル教科書体を使って大文字アルファベットのプリントを制作した。よしよし、教科書通りのABCだ、と思っていた。しかし小文字を作成しようと思ったところで「あ」となった。このUDデジタル教科書体、「a」や「b・d」、「p・q」あたりが、円+垂直棒で形成されている。まぁこれはこれで正しいが、今風ではないように思えた。それこそ「We can」では、一筆書きもできる手書き書体になっている。これに合わせたい。どうしてもこれが使いたい。そうしてまた無駄に検索の時間をかけてしまった。

そうしているうちに見つけたのが、奈良教育研究所が開発した、Nara Penmanshipフォントというものだ。件の「We can」で用いられているフォントに近い。これはとんでもないものを見つけてしまった。最高かよ。しかもラインありバージョンとラインなしバージョンの双方がある。それが教育用なら無料だということだから驚いた。いいものを見つけた。とおもったらある障害に当たってしまった。フォントを学校用PCにインストールできない。そもそもadmin権限がないので、仕方がない。じゃぁ家のMacで作ればいいじゃんと思ったのだが、今度は家のMacにはUDデジタル教科書体がない。プリントの日本語部分はどうしてもUDデジタル教科書体を使いたい。とりあえず仕方がないので、小文字練習のプリントと、3文字単語のプリントは、アルファベットフォントを優先して家のMacで作成し、日本語部分のフォントについては諦めた。

さらに調べていくうちにわかったのだが、どうやら「We can」で用いられているアルファベットのフォントは、なんとUDデジタル教科書体のファミリーらしい。そしてそのUDデジタルを作ったのは、天下の日本語フォント企業・モリサワである。そうか、モリサワのフォントを買えば使えるのか。ほしい、これはとてもほしい。しかも、UDデジタル教科書体の欧文フォントは、「We can」で用いられている、4線の間隔が5:9:5のバージョンと、4線の間隔をほぼ均等である5:6:5にした手書き用欧文フォントがある。そうだ、これだ。僕がほしいのは、4線が均等間隔の状態で用いれる、手書きに近いフォントである。ありがとう、モリサワ。

しかしモリサワフォントか、高いだろうなぁ、と思っていた。実際、モリサワのフォント製品は近年、サブスクリプション型の提供がされていた。その製品群「MORISAWA Passport」にはアカデミック版があることを知った。教職員も利用できて、4年で22,000円。そうか、年5,000円弱かぁ、買いかもしれない。いや、でも使いたいのはUDデジタル教科書体だけなんだよなぁ。と思っていたところ、ようやく見つけたのが「MORISAWA BIZ+」である。モリサワが開発したUDフォント(デジタル教科書体、黎ミン、新ゴ、新丸ゴ)が月300円で使える。無料版もあって、UDゴシックとUD明朝がタダで使える。そもそもUDフォントなだけあって、文字の読み間違いを起こしにくい。年額で比較するとPassportのアカデミック版と若干違うくらいなので悩ましいところではあるが、月額払いで気軽に始められるのがいい。

そもそもだが、フォントはとても大事だ。合理的な理由があるなら致し方ないとしても、ダサいフォントは全てがダサく見える。私はMacを14歳から使っているが、そこでヒラギノを使ったことから僕のフォントに対する感覚は変わったと思う。フォント製作者には申し訳ないが、MSゴシックやMS明朝にはもう戻れないし、メイリオが登場してからしばらくはそちらを用いていたが、游ゴシックが登場してからはメイリオさえ「もう使わないでくれ」と思うくらいだった。実際、前職ではチームメンバーに、Windows7のユーザーでも游ゴシックが使えるフォントパックをインストールしてもらっていたくらいだ。美しさはわかりやすさと同義だと思っている。その意識は、教員になっても忘れたくない。

そんなわけで結論を再掲しよう。僕は月300円払ってでも、MORISAWA BIZ+を個人Macに入れて、UDデジタル教科書体手書き用欧文を使うことに決めた。先々はMORISAWA Passportを買うかもしれないが、まずは月サブスクで試してみようと思う。

各種フォントと、小文字アルファベットを比較してみた。 均等間隔の4線に合うのがデジ教欧文手書きだとわかる。

注)「え、個人のPCで教材作るの?」と思われる方もいると思う。たしかに業務上の情報に当たる教材作成は業務で用いるPCである学校のPCで行うのが筋だ。だが現実問題として、個人が特定される成績等を持ち出す業務ではない教材作成については個人デバイスで行われていることが多いように思う。学校にいる就業時間内でやれよ、という話でもあるかもしれないが、文字入力とレイアウティングだけ学校で行い、フォントの適用→PDF化だけを家でやればいいだけの話だろう。もしこの、個人情報が含まれない教材データ作成を個人PCで行うことが完全アウトならば、もうその時は「申し訳ありません」といって今後そういうことは行わず、また別の方法を考えるだけの話である。


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