先日、ある本を読破した。東大教授の姜尚中氏の自伝「在日」。
3ヶ月前に顧問に読むべしと手渡され、豪州に連れて行くも読めず、10月少し前くらいに読み始め一ヶ月かかってやっと読み切った。
その読みのスピードの遅さも重なっての事だが、内容をしっかりと把握することに苦戦を強いられた。
氏は朝鮮戦争勃発の年に熊本で生を受けた在日二世。戦後の日本、タダでさえ生活が苦しい時代において、在日韓国・朝鮮人は多くの苦難を抱えながら生きていた。もちろん氏も苦しい生活を強いられていたようである。両親はほぼ文盲に近く、特に母親は大きな苦労を抱えていたらしい。
「おじさん」とよんでいた人の存在や、多くの人との出会いのなかで成長した氏は早稲田大学の政経学部に入り、大学では韓文研に入り活動をしていった。その頃の朝鮮半島の情勢は僕には未だ理解できないようなめまぐるしさを帯びていた。そのなかで氏は様々な活動に参加していったのである。
氏はドイツへ留学していた時期があった。その当時にも様々なことが起こったらしく、特に日ソ関係などの問題に触れていた文章が目立った。留学先で出会った友との話も綴られていた。
帰国して上尾に住んだ氏は、外国人登録の指紋押印拒否を示し、市民グループらと活動を起こした。氏を支えた、ある牧師の話も紹介されていた。
その後氏はICU非常勤講師などをへて現在東京大学で政治経済の教授をしている。「在日」のパブリックコメンテーターとして様々な方面で活躍することへの考えや、湾岸戦争・イラク戦争、それをふまえた上での朝鮮半島・東北アジアの考えなどが記されていた。
覚えているだけの内容のあらましはこんなもんだ。
でも実際しっかり理解してはいない。既に述べたことではあるが、まず自分の本を読むことへの不慣れさが第一の原因であると言えよう。これは慣れようとすればどうにでもなる。
しかし問題は第二点目にある。本に登場する様々な事件のあらましや歴史的背景等の事柄に関して、自分は全くもって無知であるということだ。正直言えば、自分には朝鮮半島の歴史と言う知識が未だ備わっていない。漠然とあるのは以前日本が植民地支配を行っていたということ、拉致問題へのこと、「在日」差別への抵抗感、とこれくらいしか浮かんでこないのだ。持っている知識も濃霧の先の景色のようにぼやけていて、知っていることの時代の幅に大きな空白がある。
氏は巻末で、「在日として生きてきた一人の男が何を得、何を失ったかを書き記したかった」と言うようなことを書いていた。しっかりとではないが、氏の意図するところは多少理解できた気がする。でもそれでは不十分である。「在日の人って大変な思いをしてきたのか」「当時の世界はこんなにも動いていたのか」こんな驚きばかりが本を読むことで生まれてきた。氏はこのような考えを抱いてもらうために本を書いていたのではないと言うから、自分はハメられたというか、読みが浅はかだった。
昨今、靖国問題でまた日韓関係にひびが入りそうな心配が襲ってくる。六者協議もなかなか進展を見せず、拉致問題も未だ解決に至っていない。氏は本文で、今年(2005)に日朝の国交が回復することを願っていたようだ。現状では、自分はそれは達成されないのではないかと思ってやまない。現実は意外と厳しいのだ。特に日朝関係ではハードルとなる物が多く、さらに壁が厚いようだし。
とにかく朝鮮半島を理解するには過去に目線をおき、現在に目線おき、未来に目線をおくことが必要になってくるのではないか。その点では、自分自身全て達成しきれていないことがよくわかってくる。それが、「内容が難しい」につながっているのだろうと思う。
もっと学習をすることが必要のようだ。とにかく顧問に借りた本は返却して、新たに自分であの本を買おうかと考えている。