政経塾潜入記

せっかく松下政経塾というとんでもない施設に足を踏み入れたことだ、記憶が続く限りそのことを記しておかない手は無いだろう。んなわけで、政経塾内部の様子を日記形式で紹介していくとする。


〜1日目〜
12:10頃、最寄り駅辻堂駅に着いた僕と母は、バス停付近で何と塾生の方に遭遇する。バスに揺られて10分もたたないうちにのぞみ学園前停留所へ。そこから政経塾の施設はすぐに見える。

政経塾の正門をくぐる。並木道の前にそびえ立つ大きな門。左には鳩を放つ女性の姿、右には「正義」を花言葉に持つひまわりを手にした男性の姿、双方が、苦難の象徴・雲を押しのけて、政経塾のマークをつけた太陽に向かってのぼっていっている。このアーチ門にはおもしろい逸話が。松下幸之助はある三人の美術家に制作を依頼した。A「ご希望通りに仕上げます」、B「ご希望に近い形で私のセンスをだします」、C「私は芸術家、私のセンスに任せて下さい」。この三人の中で幸之助が選んだのはCだった。何とも大阪の商人らしい。

門をくぐると、そこには西洋の雰囲気たっぷりの建物と、日本庭園。「和魂西知」(だったような)だとかで、折衷タイプになっているそうだ。塾主・松下幸之助像は、一番の撮影ポイントだとか。

まず通された研修棟、塾生はここでいつも研修を受けているらしい。受付してすぐさま宿泊施設の鍵を渡される。んで、行ってみることにする。

何だこの部屋の作りは。宿泊棟には全部で7つの階段があり、1つの階段に付き3つの部屋がある。例えば、1号階段にある部屋は、101,102,103と言った具合だ。縦に並んでいる訳である。さらに、部屋に入るとびっくり。テレビ(和室)・風呂・トイレ共用で、一人一部屋4人分。これはなかなか言葉では言い表せない。カメラ持っていくんだった。

また研修棟に戻り、150人収容可能な講堂へ。13:00定刻通り日程がスタートする。いきなり発表会のリハーサルと言って11名全員がスピーチをする。ガクガク。寒くもないのにブルブル。周りの喋っていることの素晴らしさ(=自分の幼稚さ・至らなさ)を感ずるばかりだった。得るものが多かった。さすが入賞者。

その後は塾紹介プログラムと称して、幸之助氏の講話ビデオを見る。なぜ政経塾を建てたのか、その切実な思いを見、また「自修自得」の精神の素晴らしさに触れることができた。びっくりしたのは、塾生の待遇。なんと、初年度は月額20万円支給されるのだ(そこから宿泊費や食事代が引かれていく)。やはり学習には金がいるって現実を見せられた気もした。塾生はそのお金のありがたみを切に感じて自分から進んで研究に励んでいる。というのも、政経塾に常任の講師は居ないからだ。自分から学ぶ相手を捜し、自分から学んでく、これこそが自修自得であり、幸之助が求めるリーダー像とでも言えるものだろう。

その後、色々施設を見て回る。政経塾にそびえる高い塔。そこに取り付けられた鐘からは毎日鐘の音が流れる。その音に耳を澄まし黙想するのが日課だとか。しかもその音、松下の音響部門が、各地の有名な鐘の音を集めて作り上げたシンセサイザー音源だとか。すげ。

食堂では、コックさんが一人で料理を作っていた。夜の仕込みだ。いつもは、成人が一日に必要とするだけのカロリー数に見合った食事を作っている。びっくりなのが自販機。ソフトドリンクの自販機の中に平然とアルコール。さすが、年齢制限22歳以上の政経塾、子どもが来ることは想定外なようだね。俺は買ってませんよ、もちろん。

何と茶室まである。日本の伝統を知るために、体育館では剣道を、そしてお茶室ではお茶の作法と座禅をやるそうだ。しかもなかなか豪華な作りになっている。しかもその部屋は、在りし日の幸之助の寝泊まり場であったらしい。だから素晴らしき外観のふすまをちょっと開ければ、エアコンがあり、キッチンがあり。

その後控え室にて待つ。次は面接。と言っても、先ほどのリハの改善点などを伺うもので、審査対象でもなく、パーソナリティを聞くものでもないらしい。会場は、円卓室という場所。通常の授業は、ディスカッションを多く取り入れるためそこで行われるそうで。なんとまぁ、声が響く。凄く良く聞こえる。面接では、主に自分の足りない部分・改善点が示された。総論的・漠然で、具体的な話を入れることを提案された。

控え室での歓談も、オーストラリアのこと(オーストラリアからの帰国子女と、来週から留学する人がいたので)など。それもそこそこに、食堂での懇親会が始まる。子どもらが喜びそうなお食事をバイキング形式で楽しんだ訳で。それに加え、色んな人と(という訳ではないけれど)雑談に花を咲かせた訳で。一人一言挨拶ということで、俺はウケないユーモアたっぷりの挨拶をした(つもり)。

部屋に移動して、ルームメイトと終始テレビを見る。11時頃から部屋でスピーチ原稿を見直し始める。そして時計が1時を過ぎた頃、やっと床につく決心がついた。

〜2日目〜
6:30頃目覚ましをかけていたのだが、やっぱりもっと寝ていたい。7時に起きれば、7:30からの朝食に十分に間に合う。てなわけで7時に起きて着替え。食堂で食事を。ご飯にみそ汁、佃煮に煮物、メインはししゃもが二匹。久々に日本人らしい食事をとる。部屋でごろつき、布団をしっかりたたんで部屋を出る。

やけにそわそわする。落ち着かない。とりあえず担任の到着を待つことにする。やはり背が高いから遠くから分る。そして会場に入る。定刻通りに開会。

関塾長の話で激励を受け、いよいよ発表が開始される。中学生の発表も前日に増してグレードをあげた。やはり、発表の仕方・内容にアドバイスを受け、それなりに変更を加えたのであろう。皆、中学生にしておくのはもったいない有望さ。そして終わると、休憩を挟む。さらにそわそわし始めるも、昨日のリハーサルほどの緊張は無いことに気がつく。

自分の番が来た。前日は完全な原稿を用意してのぞんだが、今回はそれを止めた。メモ書き程度を手にし、完全アドリブでのぞんだ。自分何言ってんだロッテ瞬間も多々あった。しかし前日よりも自信が持てる発表になった。それで良かった。昨日にも増して、高校生の発表に磨きがかかり、改善点が多く見られ、たくさんの刺激を受けた。

食事は弁当。俺、先生とたべたかったのだが、先生は一人で食ってた。水臭いなぁ。

走行するうちに発表のときを迎える。そのときまでは賞など関係ないと思っていたものの、いざそのときを迎えれば、物欲と地位欲は最高潮に達する。しかし、結果が言い渡された瞬間は、やっぱりという気持ちが生まれた。悔しさも無かった。受賞者挨拶。先にも述べた通り、「動く歩道」の話をした。それなりに掴めたと思える話ができてよかった。

写真撮影を終えると、いよいよ政経塾を後にする。皆に、「ブログ見てねぇ」と声をかけながら帰る。これからもこの付き合いが続くことをのぞみながら並木道を後にするのだった。

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政経塾潜入記」への1件のフィードバック

  1. 「ルームメイト」のfqtです。早速、ブログを拝見させてもらいました。
    『あの2日』から、遠藤さんの『力』に驚いていますが、ブログを読んで遠藤さんの『記憶力』にも驚かされました。
    自分の『特別賞』が決定した時には、正直、キレていました。「あとの4人は、国際関係について。俺は、日本人の心の問題を取り上げている。だから、特別賞ではないだろう」と思っていたにもかかわらず・・・。
    でも、仕方が無いです。皆さんは、自分より立派なスピーチをしたわけですから。それに、おかげで『悔しさ』というエネルギーが生まれました。
    それを2月7日の高校入試にぶつけたいと思います。(自分のことばかり書いてスミマセン)
    とにかく、あの場で10人のすばらしい方々に会えたことは、自分にとって財産です。

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