走り続けるenshinoは何にぶつかり、何を見出すのか (インタビューしていただく04)

遠藤さんとAngelaとの出会いは宮古島。2020年に実施された人事ごった煮会を通じてオンラインで知り合いました。その後もなぜかオンラインか宮古島でしか会わずに4年…という不思議なご縁の中、今回はキャリアについて言語化したい遠藤さんのリクエストにお応えして、遠藤さんについて語らせてもらいます。

他人からみたら順風満帆にキャリアを歩まれているように見える遠藤さん。そんな彼でも心の中に感じている”見えない壁”のようなものは何なのか。ほんの少しだけ紐解かせてもらいました。

この記事は、このブログ enshino.biz の所有者である遠藤忍が、自らの「とっちらかった思考を整理してもらいたい」と知人に呼びかけたことに端を発する企画『インタビューしていただく』の一環で書かれたものです。

著者紹介

安立 沙耶佳(Angela)
新卒で大手人材系企業に入社し、セールス、新規事業の渉外・企画担当に従事。2016年より福岡市に本社を置く株式会社ヌーラボの人事に転身。採用や採用広報、制度設計担当を経て、2022年10月よりPR担当に着任。社内外両面に向けた広報活動に従事。
認定ワークショップデザイナー / PRSJ認定PRプランナー



(1)遠藤さんのストーリーの復習

思いが強くなるほど、世の中と自分の乖離に気づく

障害者向けの研修型雇用プログラムの運営を通し、障害者雇用の在り方を模索している遠藤さん。自身が教員として出会ってきた様々な困難を抱える生徒たちとの関わりを通し、教育への当事者意識が高まった結果、偶然の出会いもありこの仕事に辿り着きます。

障害者雇用のあり方を模索する一方、日々の目の前の課題解決にもやりがいを持つ遠藤さん。共に働いている障害を持った同僚が、遠藤さんの支援を通し、業務範囲を広げていることも達成感につながっているそうです。

仕事のやりがいは十分。元々高い当事者意識は、関わるほどに高まり、自身のアクションしてきたことが増えるほど、自分の存在によって障害者雇用のインパクトを高められるのかを考えているように見えます。加速度的にアイデアは止まらなくなるタイプだと推測するので、今も目の前にはやりたいことがたくさん溢れていることでしょう。

しかし、思いが強くなればなるほど、社会のいわゆる”普通の人”からの障害者雇用に対する認知の低さに対峙することとなり、愕然としてしまうことも増えてきていることでしょう。怒りにも似た感情が芽生えることもあるそうですが、どうしても構造上生じてしまう”社会の不”の側面として、状況を冷静・フラットに受け止めている遠藤さんもいるように見えました。

これはCSRか?ビジネスか?

遠藤さんの勤める会社での取り組みは、社外から見ると意義高く、素晴らしいとしか言いようがありません。しかし、社内では課題をまだまだ感じているとのことでしたね。障害者雇用だって「売上達成のために100人採用する」という戦略とダイレクトなストーリーがあるべきなのに、どうしてもそうはならない。継続的な雇用枠の確保の難しさや、正社員登用のハードルの高さなど、理想に向けたハードルは多く立ちはだかります。そうなってしまう状況を冷静に俯瞰し、会社がそうせざるを得ない構造が見えているからこそ、自分の行っている障害者雇用が”マイナスをゼロにするための手段”のように感じてしまい、モヤモヤされているのかなと感じました。

あなたは「顧客理解」に必要な想像力を持っているか

「インクルージョン」は本当にビジネスに必要なのか?インクルージョンが必要と言われる文脈は主に3軸あると、遠藤さんなりの考えを教えてくれました。

  1. 誰もが働きやすい環境を構築し、優秀な人をとどめておくため
  2. 多様な人材でイノベーションを起こすため
  3. 働く人にインクルージョンの視点を持ってもらい、顧客の多様なニーズが拾える人材の育成に繋げること

昨今、アクセシビリティをはじめとした「合理的配慮の義務化」の文脈が唱えられるようになったことから、ビジネスと繋げやすくなってきている側面はありますが、遠藤さんの会社のような、クライアントの要望をもとに業務を行う現場ではなかなか繋げにくいことでしょう。

遠藤さんがお勤めの会社は、重要な価値観の一つに「お客様」を挙げていますね。これを掲げた以上、顧客のことを理解するために想像力を強めることは、従業員がアウトプットするための義務であるとも言えるとおっしゃっていました。

だからこそ、③の文脈をいかに経営陣、ラインマネージャー、現場に理解してもらえるかが大切だということは、遠藤さんもよく理解されていました。

お話を進めていく中で、インクルージョンを定着させるために必要なのは「カルチャーへの組み込み」と「ビジネスモデルへの組み込み」の2軸があることに、遠藤さん自身が気づかれていました。

「カルチャーはビジネスを推進する上での一番土台となるものであるため、決して軽視できるものではない。」

それはグローバル企業において、経営陣からラインマネージャー、現場まで定着している考え方でしょう。

ここまで整理すると、カルチャーという緊急ではない(短期的には効果が見えづらい)が重要な事項と、ビジネスという緊急かつ重要な事項の優先度の対立のようなものが、そのまま遠藤さん自身にモヤモヤとなって降りかかってきているのかもしれない、とも感じながらお話を聞いていました。


(2)遠藤さん 他己分析

ここからAngleaの主観をさらに盛り込んで遠藤さんについて感じたことを勝手に分析させてもらいます。

信念の強さと、それを行動に繋げる実行力

ご自身でも自覚されていましたが、ビジョナリーなものに対しての共感度が強く、それを思うだけでなく、行動にも繋げられる方です。これは充実した仕事人生を送られている証拠でもあると感じています。キャリア挫折があるとはいっていたものの、仕事の中でコツコツ努力することで成果につながった経験があるからこそ、今もビジョンに沿って働くことができる。成果につながれば、「さらに”何かワクワクすること”に出会えるかもしれない」という期待を持って仕事が進められるレベルの自己肯定感を持ち合わせていると言うことだと感じました。

わかってくれない相手の立場も想像できる

遠藤さんがインクルージョンが経営戦略上必要だと言っているロジックは完璧だと思います。反対する人はいないし、納得感もあります。
遠藤さんのモヤモヤは、逆に「最優先事項」と掲げることができない経営陣はじめ会社の言い分も痛いくらいにわかっていて、自分の中にある「自分の信念 vs 会社の理解」の構図の中で、自分の信念が”圧勝”はしないことを、ご自身でも理解していることに起因しているのではないかと思いました。遠藤さんは頭がいいです(笑)。そして応援者もたくさんいるから、今回のヒアリングに手を挙げてくれる人もたくさんいます。それでも少しモヤモヤしているのは、ある程度自分でも会社の構造的な都合のようなものに対して、理解ができているからかもしれないですね。

「自分の仕事はお金をもらって綺麗事を言うこと」と言い切っていたのはかっこよかったです。遠藤さんのような人がいることもインクルージョンの一部だと思うので、このまま声は大きいまま突き進んで欲しいな。

社内に同志が出現したら、遠藤さんはどう変化するのだろうか

二人で会話させてもらったことを振り返りながら、そもそも遠藤さんの今回のモヤモヤの発生原因はなんだろうかとずっと考えていました。

自身の遂行している業務に対して、真っ向から反対する人もおらず、受け入れてくれる現場もあり、一定の理解を得ている。今後、活動に共感してくれる人を増やすためにはラインマネージャーに価値を解いていく必要があることもわかっている。

一見うまくいっていそうな状態に対し、何が足りないのかと考えると、「遠藤さんと同じ立場で業務を遂行する仲間」が増えることではないかと思ってしまいました。

社内から、ひいては社外からもこの活動に賛同者を増やしていくための自身の語彙を増やしたいと言っていましたね。社内の他の部門に日々壁打ちする相手がいたら、実はもっと早期に言葉は磨けていたかもしれません。

また、仲間が少ないことを打破するためには、活動の規模を法定雇用率の達成という枠からさらに広げ、”現状の規模を維持”という状態から脱することを経営から認めてもらう必要がありそうですね。

全ての因果はつながっていて、どこからアプローチするのが有効かはわかりませんが、もしこの活動を「拡大する」という意思決定が、会社としてなされた場合どうなるでしょうか。ラインマネージャーに意義を伝えていく必要は一気に高まるでしょうし、障害者雇用枠での採用活動もグッとスピードアップしていく必要が生じるでしょう。

本来であればそこに対して苦心しながら仕事をしたいという欲求が遠藤さんの中にあるのではないかと思っています。

次はどこに向かうのだろう?遠藤さんの行く末は予想できないから面白い

これまでのマーケティング会社での経験、教員としての経験、そして現職での経験。一見するとキャリアチェンジなのだけど、自分自身の考えや理想はブレず、経験から滲み出た信念をもとに次のアクションを起こしています。だから一貫性を感じるし、少しずつ軸足をずらしながらピボットしていくように見えます。全ての経験があっての「今」という感じ。

これからも「現状維持」したいと言う気持ちはないだろうから、今の会社で思い切りぶつかってトライしてほしいな〜とも感じました。障害者雇用がデルの「カルチャー」につながるまでの道筋をもう少しだけくっきりさせてから次のステップに進んでもらえることを願っています。


(3)最後に:自分も社会構造の一部であるゆえ、自分ごとにせざるを得ないはずなのに

個人的にグサっときたのは、ジョブディスクリプションの話。いかに国籍、人種、障害特性に関わらずこのジョブディスクリプションに該当する人材を採用するといっても、その経験を有するチャンスが等しく与えられていなかった可能性まで自分が想像ができているのか。見せかけの平等。平等と公平の違いを突きつけられましたね。

学習すること、努力することが当たり前の環境で育ってこれた私は、努力の成果を100%自分のものであると勘違いしてる節があるんですよね。自分の中に自己責任論者がいるのもわかっています。その考え方に少し変化をもたらしてくれたのは近年の震災のような人間の力ではどうにもならない事象だったかもしれません。

久しぶりに遠藤さんとお話しできて、私自身にも気づきがたくさんありました。ありがとうございました!

Comments

comments