児童生徒に家庭学習を課す際や学習状況の把握を行う際には、ICTを最大限活用して遠隔で対応することが極めて効果的であることを踏まえ、今回が緊急時であることにも鑑みると、学校設置者や各学校の平常時における一律の各種ICT活用ルールにとらわれることなく、家庭環境やセキュリティに留意しながらも、まずは家庭のパソコンやタブレット、スマートフォン等の活用、学校の端末の持ち帰りなど、ICT環境の積極的な活用に向け、あらゆる工夫をすること。
通称「文科省通知」(正式には「新型コロナウイルス感染症対策のために小学校、中学校、高等学校等において臨時休業を行う場合の学習の保障等について(通知)」)において、「いいからジャンジャンICT学習やれや」とでも言わんばかりのお達しをいただいたのだが、その頃には実は僕のオンライン学習熱はやや冷めていた。冷めていた、というよりも、足元からできるところをやっていこうと思い至った、というのが正しいのかもしれない。
そんな最中に行われた文科省の動画配信「学校の情報環境整備に関する説明会」で、担当課長が強い語気でこんなスライドを出したからたまげた。
オンライン化は、待ったなしなんだというなか、「うまいこと、しれっとやる」の精神で、いろんな情報を収集したし、いろんなことを考えたし、いろんなことを実践している最中である。自分の記録として、バラバラと、残しておこう。
今回は、まさしく上記の画像が出された「学校の情報環境整備に関する説明会」に関する話。一度Facebookに投稿したが、それをリライトした。
さてさて例の動画。文科省のGIGAスクール構想の担当課長が、職名で政策を説明する動画配信で言い切った。在宅勤務であった当日の午前中、「これも立派な教具研究だ!」といって、自宅から「拝見」。担当課長、語気が強い。
ところで、かなりシェアされた「えっ、この非常時にさえICTを使わないの、なぜ?」のスライドと、「これからは使わないことに説明責任が生じる」という強いメッセージ。それはICT導入推進を図りたい現場の教師にとって追い風になっただろうが、正直まだその層はマイノリティだと思っている。だから、「ふつーの」教員であれば、この動画を見ても「え、で、なにすればいいの?」となって、ただただ混乱や負担感を感じるだけになる気がする。
そもそも件の動画は、目的を伴う予算措置による政策の実行に関する説明であり、そのメッセージの主たるターゲットは、教育委員会=環境整備を担う学校設置者の実務執行担当者であって、教員じゃない。さらに言えば、この動画から感じたのは、文科省はあくまでも「がわ」を用意するのが役割であり、その「がわ」を使って何をするかは、(よく言えば)教員の自由度が担保されている。となると、この動画を見る上では、この政策によって実現される世界観を理解した上で、【何のために・何を使って・何をするか】の妄想を膨らますことが必要だと思う。
その上で、この動画中の担当課長の話の中でキーだと思ったのは、この2枚のスライドだといい切りたい(どちらも出典はこの資料)。
すなわち、文科省が実現しようとしている世界観では
1人1アカウントを持つクラウドサービスの利用
が前提になっている、ということだ。1人1端末整備も、10Gbps級の高速大容量光回線整備も、家庭でのネットワーク接続の担保も、サポート人材の確保も、特別な支援を要する児童生徒へのデバイス配慮も、そして総務省予算のネットワーク整備の話も、経産省予算のEdtech企業への補助も、私からすれば全ての前提にはクラウドサービスの話がくると思っている。
そして思うに、案外多くのオンライン教育導入にトライする教員が、この部分への理解が薄いまま、動画配信とかWeb会議システムを活用した実践をしようとしている印象がある。別にそれを否定する訳ではないし、オンライン朝の会とかすごくいい実践だし、もっとも、喫緊なのは「つながり」だという豊福先生のご指摘には同意しかないのだが、正直言って、「授業の再現」には違和感がある。
ここのところもっぱらの関心時は、「動画配信!」でも「Web会議による双方向授業!」でもなく、どのプラットフォームを導入するか。ここが一番重要で、先決で、だけど一番、現場単位でどうのこうのするのが難しいところだと思う。だが考えてみれば、講義も、練習問題も、ホームルームも、部活も、休み時間の他愛もない会話も、すべて「校舎」というプラットフォームにおいて起きていることであり、そうなると、オンライン学習でも同様に、まずはプラットフォームが必要なんだと思う。
担当課長も動画中で「対面授業に勝るものはありません。でもそれができないんです」と言っていたし、それが印象に残っている。だがオンラインは、オフラインの代替や補完のためのものではなく、まったく別のパラダイムで考えねばならないもの。だからこそ、オンラインのプラットフォームの機能や特性を理解し、その上で、プラットフォームにのっける個別のアプリケーションとしての学習活動をデザインせねばならないんじゃないだろうか。その枠組みなしにオンライン化を図ろうとするから、動画が乱立して、そこに対して「既存のコンテンツでええやん、スタ○プとか」みたいな意見の応酬が始まるんだ。
その意味で、文科省はきっと「校舎は整備するから、あとは何をするかは先生たちが考えてね」と、よく言えば現場の自主性への加勢をしてくれているんだと思うことにしようと思う。Facebookではここまでしか書かなかったが、悪く言えば「ガワは作っておいたからあとはよろしくね」というぶん投げである。しかし、だ。そうそう多くの教員が、思い描く実践=学習活動とツールの利用を結びつけて考えられるとは思えない。
そうすると、だ。今回の動画説明会で、文科省が教育委員会をせっついて、なんとか環境整備が整ったとしても、それを教員が利活用しなかったら、そもそも構想自体がポシャってしまう。それを現場の教員のせいにされてしまう。だがそれもそれでたまったもんじゃない。何から手をつけていいかわからず、やれWeb会議だ、やれ動画配信だ、と、とっつきやすいアプリケーションレベルから手をつけてしまうことで、余計に「クラウド・バイ・デフォルト」の根本思想が薄らいでしまう。それじゃ意味がないんだ。
大事なのは世界観の共有で、その意味で言えば、件の動画で最後に登場した、経産省の浅野さんが、コンパクトな説明ながら、めちゃくちゃ明快な世界観を提示したので感動した(が、それはやはり「経産省」の視座からのものだよな、とも思った)。その、世界観の共有、って話で言えば、アニメオタクの僕は、映画「サマーウォーズ」を思い出す。そこには “仮想都市 Oz” というプラットフォームが存在し、人間生活のあらゆる「リアル」とリンクしている。だからこそ想像できるサービスがあるんだと思う。
なのでもう一度いう。わたしの見方からすれば、GIGAスクール構想でもっともキーなのは1人1アカウントを持つクラウドサービスの利用である。その前提で、諸々動いていただきたいものだ。
「よろしくお願いしまああああす!」
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