LAST EXITを読んで

あまり本を読まない俺でも、奥山貴宏さんの本5作品は全部もってる。だけど今のところ生前最後の作品・ヴァニシングポイントには着手できていない。
修学旅行前日から、死後に発行された最終作「33歳ガン漂流 LAST EXIT」をよみはじめ、修学旅行から帰ってきた次の日に読破した。修学旅行中は、行きの飛行機と帰りにしか読んでいないので実質3日ほどで読んだことになる、俺の中では最短ではないだろうか。
LAST EXITは、奥山さんのWeb日記やブログ、コラムを載せたガン漂流シリーズ3作目。32歳ガン漂流Evolutionの最終日の次の日、つまり2005年1月から死ぬ前の日、4/16までの日記とブログ記事、コラム、そしてご両親の挨拶という形で綴られている。著者亡き後の発行であるから、著者自信による校正は全くなされておらず、誤字脱字のみの修正で、奥山さんが書いた記事は全てWeb日記・ブログから転載した物。
であるからして、俺は一度、Webでこれらの記事を読んでいることになる。しかし、改めて読み返すつもりで読んだ。シリーズがガン漂流・ガンエヴォ・LAST EXIT
と重なっていくうちに、徐々に奥山さん自身の病状の悪化が見て取れる。しかし奥山さん自身のとってきたスタンスは3作品全く変わりがないように思える。
ただ今回のLAST EXITが他の2作品と異なる点は、ご両親のご挨拶がある点だ。お父様、お母様による文章からは、奥山さんの人柄や闘病生活の大変さ、それを支えて苦労が伺える。何より、ご両親の、奥山さんへの愛情が感じられる。「貴宏へ」と題されたお母様のメッセージには心が打たれる。
死ぬ前日に残した記事、今読み返しても切なくなる。これを読んだとき、「いったい何を口にしてるんだろうか」と思っただけで、このメッセージが最後のメッセージになるなんて思いもしなかった。奥山さんの死を知ったのは、葬式の後だったっけ、本当にせつなかった。ご存知の通り、今年夏に参加した朝日ニッケ・オーストラリア研修に行けたのも奥山さんを題材にしたエッセーのおかげ。亡くなる前にお目にかかりたかったと今でも悔やんでいる。
しかし本当にガン漂流シリーズは闘病記と呼べるのだろうかと首を傾げてしまう。「頑張っていきよう」なんてのがほぼ無い。触れられているネタの半分は、病気とは関係ない。治療内容や、入院生活をシニカルに表現していて、主観的文章も客観的に見えてきてしまう(されど書かれている治療内容は忠実に書かれている)。僕の人生観を変えてくれたかのようなシリーズでもあった。
もし今俺ががんにかかったら。余命2年で切除不能なら。俺は奥山さんと同じように生きたい。俺は仕事ではなく、可能な限り学校に通いたいと思う。病院に入っての延命よりも、日々の生活を楽しんだ上で寿命を縮めるほうがいい。今の俺はそう思う。クゥオリティ・オブ・ライフは人それぞれ。俺は短い時間の中で多くのことをやりたい。「太く短く」と「細く長く」、退席が同じなら前者を選びたい。そう思わせてくれたのが奥山さんの存在だった。

天国の奥山さん、俺は今でもしっかりやってます。奥山さんのおかげで、色んなことを考えることができました。「忘れられたくないから、本を書く」と言った奥山さん、俺の記憶の中で奥山さんは生きています。奥山さんの書いた本は、確実に人々の記憶に奥山貴宏の名を刻んでいます。
なんて呼びかけてみて、シニカルな答えが返ってきても、俺はへこみません。

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