オンライン学習のよもやま:⑥通信費と通信帯域 – 最低限度は1Mbpsで十分

コロナ禍における学習保証の話と、GIGAスクール構想の話とが相まって、オンライン学習がいろいろ騒がれている。でも私はなにか大きな仕掛けをしている訳でもない。ほんとはもっと記事を読んで欲しいけれどそんなにリーチもしないこともわかっているので、隠れてもないけれど好き勝手に記事を書いてやるんだ(最近読んだ『読みたいことを、書けばいい。』に影響を受けすぎである)。シリーズ記事では書き出しを統一しておいて「続きを読む」から先の中身を変えたい派なので、例の如く「例の動画」の印象深いスライドを貼っておく。

Youtube動画からキャプチャしました

文科省の動画配信「学校の情報環境整備に関する説明会」で、担当課長が強い語気でこのスライドを出した件、もう再来週から通常投稿になるので「脱非常時」なんだけど、オンライン化は、待ったなし。「うまいこと、しれっとやる」の精神で、いろんな情報を収集したし、いろんなことを考えたし、いろんなことを実践している最中である。自分の記録として、バラバラと、残しておこう。

今回は、現在の私が、本来ならあまり関心を寄せていない領域である、オンラインビデオ会議システムにまつわる部分の話。特に、案外穴になっている通信費に関してである。ちなみに、この記事内では特定の企業のサービスをヨイショする感じの記載が見受けられる可能性があるが、お金ももらっていないし、そもそもヨイショする気はない。


オンライン学習の通信費が生活保護の対象になるらしい

まずこの記事を書こうと思ったのは、以下の記事を目にしたことがきっかけだ。ちなみにNコムの稲田さんは、直接お会いしたことなんて当然ないけれど、さすがまなびポケットのご担当だけあって、noteのコンテンツがリッチ。私がつらつら書くよりよっぽど有益なことを、当たり前だがたくさん書かれている。個人的には「GIGAスクールについて中二の娘に聞いてみた」がスキ記事。

これはビッグニュースだ。週明けにさっそく管理職に言ってもいいと思えるくらいのビッグニュースだ。

というのも、私が勤務する自治体は、開示されている統計情報を見てもわかるほど、生活保護受給率が高い地域で、まぁ経済的に「しんどい」。そして、ほんとのところの生活実態はわからないものだが、同僚や管理職をしても、「この辺の子たちはオンライン環境が整ってないだろうからねぇ」という印象を抱いている。実際、インターネットに接続できるデバイスはもはやインフラ化しているから、家庭レベルで見ればみんな所持しているので「環境がない」わけがないのだが、高速固定回線への契約となると、「どうだろう?」という印象を抱きかねない。オンライン化への移行を阻んだ理由の一つが、この印象だったともいえるだろう。

私は、この印象論自体を否定したい訳じゃないし、むしろ「そう思いますよね」と同意すら覚える。どれだけ文科省が「保有しているところから先に初めて、未保有の場合には学校のデバイスを貸し出してもいい」と言ったところで、未整備の家庭が多いことが都市部と比較して多そうだと予見されるエリアにおいては、そういう発想になるだろう。ただ実際のところ、4月にいったん学校が再開してまた3日後から休校となった、その3日間のうちに、所属する学年の生徒たちに挙手アンケートをとったところ、オンラインアクセスができなさそうな家庭は肌感覚で2割程度だった。案外少ない。

となったときに、家庭の回線インフラを整えることが喫緊の課題の一つなわけだが、GIGAスクール構想の予算項目や、コロナ補正予算の項目、あるいはニュースを見ても、ルーターには金をつけるが通信費には金をつけないという。まぁ、「国」の予算を充当する範囲をどこまでにするか問題はあるが、肝心なのは「通信費」であって「通信機材」じゃないだろ、と思っていた。そこへきて、この稲田さんからシェアされた記事である。希望である。通信費は必要インフラであり、生活において保証されるべきものである、と。もうここまでくると、「通信環境が経済的理由で整わない家庭がある」という言い訳すらできなくなってきた。


1Mbpsでもビデオ会議なら問題なくできちゃう

じゃぁ、どのくらいのスペックの通信が必要なのか、という話である。ちなみにここからは、固定回線の話ではなく、携帯電話回線の話であって、そして私の体験談である。

結論から言おう。よほどのことがなければ、上下それぞれ1Mbpsが出れば、本当の最低限度は確保できる。もちろん早いに越したことはなく、またこの書きぶりをするとGIGAスクール構想の世界観を全否定しかねない(そもそもメガだし)が、ある条件下においては、この速度で十分だと思っている。

そしてもう一つ。通信制限がかかった場合の速度として下り1Mbpsを設定する回線事業者がいるわけで、それを逆手にとれば、1Mbps使い放題に契約すれば従量課金されずに定額でオンライン学習環境の最低限度を担保できる。そしたら、変動費ではなく固定費としてみなせるので、財布の心配もなかろう。もう、それでいいじゃん。

なぜそう言い切るかと言うと、私が下り1Mbps環境下でじゃんじゃんZoomをしているからだ。もっというと、昨今私はZoom会議をする際、Rakuten Mobile UN-LIMITの回線を用いて、同時に「my楽天モバイル」にてデータ制限モードをONにして、下りのベストエフォート1Mbps・実効平均900kbpsの速度で通信して、そこまでストレスなく会議に参加している。言い忘れたが、当然、MNOとしての楽天モバイル基地局は私の現住所には立っていないので、auのパートナー回線を使った通信だ。その場合の月の通信制限容量は5GBだが、通信制限モードをONにしているので、それを食わない。

この、下り1Mbps環境(上りもだいたい1Mbps)で、5月のGWに参加した「アカデミーキャンプ」という5日間連続のオンラインワークショップも乗り切ったし、種々開催されているオンラインセミナーへの参加も乗り切っている。通信システムはZoomに限らず、Facebook Messengerビデオ通話、LINEビデオ通話、WebEx、Google Meetsあたりを試しており、そんなに「ダメじゃない」ことがわかっている。


Web会議システムは1Mbpsで耐え切れるのか

しんどいな、と思うのはGridviewにしたときと、画面共有で動画を再生された時。ZoomにおけるGridviewはおそらく(つまり私の推察として)、各参加者から送信されているビデオ映像をサーバーで集約し、参加者個々のの下り回線速度に応じて誰の映像を優先的に配信するかをコントロールしているのだと思われる。なので、各参加者の「送信された映像」をそのままのクオリティで全員分再現したかったら、当然下り回線速度は早くなきゃいけないし、参加者が多い=表示数が多いならなおさら回線は太くないといけない(だからZoomでは「49人まで表示」がオプションになっていると思われる)。とうぜん、PCデバイス側の動画処理速度にも依存するだろうが、Gridviewのなめらかさは回線速度に依存する。となると当然、下り1Mbpsでは、Gridviewの際に喋っていない人の映像は、固まる。でも、喋っている人の映像は、割となめらかである。なら、大した問題じゃない。

画面共有で動画を再生される場合についてだが、当然動画自体は映像の情報量が多いので、共有する側が再生する映像の圧縮度合いに依拠する部分が大きいものの、回線が太ければより多くの情報量を受信できるので滑らかに見られる。そりゃそうだ。だがしかし、Zoomの画面共有で映像を見るということは、私の経験ではそんなに多くなかった。他方、PPTの画面送りなどはわりにスムーズに見ることができたし、音声が共有される場合もそんなにネックじゃなかった(「アカデミーキャンプ」で休憩中にBGMを共有し続けたが、何ら問題がなかった)。

なんでそんなに速度が低いのにさほどのストレスを感じないのだ、と思うかもしれないが、そこがZoomが技術的に優れているところだと思う。ブレイクアウトルームだとか、ハードルの低いUXだとか、いろいろ利点はあるだろうし、逆にセキュリティ懸念もいっぱいあるが、なによりZoomが優れているのはビデオ圧縮の技術に尽きる。社長は元CiscoのWebEX開発責任者だったわけで、通信回線を安定的にする技術を結集させた企業体であるCiscoから生まれてきた技術に源流があるとすればすごく納得いく。

じゃぁ他のWeb会議システムはどうなんだ、という話だが、それもちゃんと試してあって、個人的な感覚としてはだいたい以下の感想を持っている。

  • Facebook Messengerビデオ通話:ぜんぜん問題ない。1Mbpsでも安定して喋れる。
  • LINEビデオ通話:ぜんぜん問題ない。1Mbpsでも安定して喋れるし、なんならちょっと「盛れる」。
  • WebEX:私サイドで問題になる感覚は起きなかったが、一緒に会議した初見ユーザーからはUXで不満が出ていた。通信は1Mbpsで何ら問題がない。
  • Google Meet:ある時実験をしてみて、1Mbpsで問題はないように感じたものの、私じゃない参加者のビデオがかなり乱れていた印象を持った。おそらく回線の問題ではなく、ブラウザベースで動作するが故に、PCのスペックの問題なんだと思った。

と、ここまではWeb会議システムを利用した場合の「1Mbps」という速度の体感値について触れてきたが、Youtubeを高画質で見たり、PCでブラウジングをしたり、割と重めのデータをダウンロードする場合には、当然ストレスがつきまとう、というか使い物にならない。でも、Youtubeは画質を下げればいいし、速度がストレスだと余計なネットサーフィンをしなくて済むし、オンライン学習で提供されるダウンロードなんてだいたいワークシートとかだろうからデータ量もそんなに重くないはずなので問題にならない。繰り返すが速度は速いことに越したことはないので、この話はあくまでも「最低限度」のラインである。それにしても、1Mbpsは、通信制限をくらっているようで、その実「制限」ではない。


私が1Mbpsでも問題ないと言い張る理由

なんでこんなに1Mbps環境下でのトライアルが多くなったかという話をしよう。

私は、自宅アパートに光回線を引いていない。というか、引きそびれた。2019年の3月末に引っ越してきて、フレッツ光コラボの工事を依頼したら、最速で1ヶ月先と言われて絶望した。インターネットは「私の基本的人権」なので、ないと困る。そこでWiMAXを契約することにした(事業者はBroad WiMAX。ちなみにWiMAXはMVNOだろうが本家UQだろうが回線速度は実効ベースでも変わらない)のだが、WiMAXには通信制限が存在する。

3日間の通信容量が10GBに到達した場合、
翌日の18時〜午前2時までの通信速度が下り1Mbpsになる

しかしネトゲをするわけでもなく、日中は仕事に出ていた私は、そんなにこの制限に引っかからず生活ができていた。強いて言えば、Amazon PrimeやYoutubeを休日に見まくるとすぐに制限に引っかかった。なのでYoutubeについては、Biglobe Mobileのカウントフリープランを申し込んだ上でスマホでしか閲覧しない制限を自分に課した。

ところが、このコロナ自粛である。自宅生活が続き、オンライン学習の話も盛り上がり、自分にとっての実験としてどんどんZoomをしまくった。他のサービスに比べてZoomは通信量が抑制されていて、1時間あたりの通信では500MB程度の消費だとどこかの記事で読んでいたのでそれを信じていた。しかし、1回1.5hのミーティングで通信量カウンタは3GBを示した。「はぁ?」と思ったが、間違いはなかった。問題は下りの通信量だけじゃない。こちらの送信側:上りの通信量もカウントされる。そして日々、通信制限を食らう日々がつづいた。

だが、その通信制限環境下でも、ぜんぜん余裕でしゃべれている。1Mbpsでも安定して通信できるのかよ、と気づいてしまった。そこへきて、Rakuten UN-LIMITが、1年間無料キャンペーンをしているのに加えて、4/22からアップデートを行い、パートナー回線であるau回線を使用した場合のパケット通信制限容量を2GBから5GBに上げ、さらに通信制限時の通信速度を128kbpsから1Mbpsに上げた。そりゃ申し込むでしょ、といって契約。以降、自宅の基本回線はWiMAXで、Zoom会議をする時だけ、そのデバイスをRakuten Mobile回線に接続する形をとっている。


そんな通信環境を構築できる事業者なんてあるんかいな

急増したテレワーク需要によって、4月当初くらいに私が必死こいて検索して情報を集めていた各オンライン会議ツールのデータ消費量についての情報も、より確からしい情報にたどり着くことができた。以下の、窓の杜の特集記事を見るとわかるが、Zoomのデータ消費量にも、ミニマムとマックスとではだいぶな差があり、一概に「一番軽い」とも言い切れないことがわかった。

主要なテレカンツールのデータ通信量ってどのくらい?
「Hangouts Meet」「Microsoft Teams」「Zoom」を比較

他方、下記の記事を参照すると、Zoom / Meet / LINE あたりはデータ消費量にさして差がなく、ということは私の1Mbps環境でZoomとLINEは安定利用できたことが証明できているから、Meetでも問題なく、また窓の杜の記事を鑑みるにTeamsでも安定して、1Mbps環境でビデオ会議ができるんだと類推できる。

【検証】ZOOMのデータ通信量と1GBまでの目安。他のビデオ通話アプリとの比較

では、そんな1Mbpsでも定額で通信できる通信事業者があるんかいな、と思ったんだが、あった(まぁ、あったから私は通信できてきたんだけど)。

  • NTTドコモ
    意外に思われるかもしれないが、実はドコモの「ギガホ」では、いわゆる「ギガ死」後の通信速度がベストエフォートで1Mbpsなのだ。これは調べて驚いた。ただでさえ現状、3大MNOが25歳以下への50GBまでのパケット通信を開放している休校期間において、さらにそれを使い切っても最低限度の速度は担保されるときたら、こりゃ問題ないよね、と。
  • WiMAX
    先ほども記載したが、我が家がまさにWiMAX。正直1Mbpsは通常使用においてはストレスだが、通信制限がかかるのも夜間帯なので、通信制限がかかったら、諦めて寝ればいい。夜更かしは禁物。
  • Rakuten Mobile
    これも先ほど記載した通り。Rakuten通信エリア内なら5GBのデータ利用制限がないので1Mbps問題すら考えなくていい。もし1年間無料キャンペーンが終わっても、月2,980円だから、だいぶコスパはいいと思う。
  • @モバイルくん
    いまのところMVNO(格安SIM)において、定額利用し放題のプランを用意しているのはここだけだと思う。ここは、通信規格が、話題の5Gでもなければ主流の4Gでもなく、その1世代前の3G回線を利用している。そのため、ベストエフォートの下り速度が14.7Mbpsだ。実効だとさらに落ちるだろうが、何ら遜色はないと思っていいんじゃないだろうか。

おわりに

で、この話は結局、どのツールがいいとか、どのサービスがいいとか、そういうことではなく、オンライン学習をなんとか最低限成立させるために必要な環境がどのレベルか、というのを示したにすぎない。一番大事なのは通信することそのものなのだが、どうにもその通信自体には予算がついていない。となった場合、どういった環境を提示できるのかを考えておくこともまた、オンライン学習を推進する教員としては考えておくべきところじゃないんだろうか、と考えている。

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