地域活性ネタをもう一つ。イルミネーション湘南台の慰安旅行として行った、新潟県魚沼市小出の「小出国際雪合戦」は、私の冬の年中行事となるほど重要なイベントとなりました。2013年は都合により行けなかったのですが、これほどまでに楽しみにしているイベントは無い、というほどにハマってしまっています。イルミネーション湘南台の卒業生たちが、現在では社会人雪合戦チームを結成して臨むほど、人々を魅了します。毎年のように、社会人になっても手間を惜しまずに準備を行い、たった2日間を大いに楽しむ、その魅力はいったいどこにあるのでしょうか。そしてその魅力の源泉は他の地域活性事例にあてはめられるのでしょうか。
地域が活性するポイントとして私が捉えている要因は3つあります。特に、外の人に来てもらうようなイベントとして地域活性が成立するには、次の3点がポイントになると思っています。一つはおいしい食事とお酒、もう一つはデメリットをメリットにしてしまうだけの資源とアイディア、そして最後はバカバカしいほどのくだらなさ、です。小出国際雪合戦には、その全てが集約されていると感じました。だからこそ僕はハマってしまうし、同様のリピーターも多いのだと思います。イルミネーション湘南台については、この3要素はそれほど当てはまりません。しかしそもそも、過疎化地域における活性化と、新興都市部における活性化とでは、わけが違います。いわゆる「いなか」に来てもらうための仕掛けが何か、というのがこの『卒業政策』のポイントになります。
一つ目のポイントである「おいしい食事とお酒」ですが、正直言えばこれは「いなか」であればどこにでもあると思っています。特に、いわゆる中山間地域で農業地帯であれば、食材もお水も美味しいに決まっています。もちろん魚沼といえば全国に知れ渡る米どころ、かつ酒どころです。小出国際雪合戦大会では、その前夜祭において、地酒とおにぎりとその他たくさんの食事が振る舞われますが、それのおいしいことおいしいこと。多くの地元外の参加者がこの要素に惚れてしまうのです。このおいしい食事とおいしいお酒は、必然的にコミュニケーションを形成します。外部と内部との接点だけでなく、内部コミュニティにおいても同様です。
二つ目のポイントになる、デメリットをメリットにしてしまうだけの資源とアイディア。これについては少し説明が必要ですね。魚沼市は、2012年の話ですが、災害対策基本法による豪雪地帯の指定を受けました。つまり、雪が災害指定レベルで降るわけです。尋常じゃないほどの積雪量は、中山間地域で老齢人口が増すばかりの地域にとってはデメリットでしかないと僕は見ています(もちろん地域の人々は昔からそれと付き合ってきた訳ですが)。スキー場の観光資源化もなかなかむずかしい。そんなデメリットになってしまうような雪を、雪合戦というアイディアでコンテンツ化してしまっている点に、小出国際雪合戦の工夫が感じられます。雪はまぎれもなく資源です。その資源をどのように活かすかに、活性化のアイディアのポイントがあると思います。
最後のポイント、そしてこれは僕がさまざまな物事の価値判断をする際にかなり重視していることであり、また小出国際雪合戦以外にもいくつかの事例であてはまるのですが、それは「くっだらない、ばっかばかしい」ことを本気でできることです。小出国際雪合戦については、かつて私が書いたブログの記事をご覧いただくか、Googleで画像検索※していただくと分かるのですが、とにかく「ガチ」なんだけど「ガチ」じゃない。コスプレ参加が推奨されていたり、審判長の独断と偏見で決勝リーグにあがれる推薦枠があったり、男性が女性に本気で球を投げると怒られたり、ワイロが歓迎されていたり、どうしてそんな「ばっかばかしい」ルールで平気で楽しめるのか!というほどの設計になっています。しかし、そこがミソなのだと思います。それがとにかく面白いのです。面白いから人が来る。「くっだらない、ばっかばかしい」と思えるようなことをオトナたち本気で取り組むことが珍しいでしょう。その情熱と、そしてコンテンツ自体に人は魅力を感じるのかもしれません。
私の知り合いが、「伊那谷デザイン会議」という取り組みをしていて、地域活性系の助成金を得るほどの取り組みなのですが、それもまた「くっだらない、ばっかばかしい」。畑一面を使ってジオラマをつくったり、正月にゲリラ的に年賀状を各家庭にばらまいたり、そんな活動を通じて、外部と内部との人の交流が生まれる話も聞いたことがあります。日本の関心はグローバルを向いていますが、まだ発見できる魅力は日本にも眠っている。そこに目を向けることもまた、価値創造につながるのでしょう。
※ちなみに、画像検索をしたとき、私の検索結果の一番最初に出てきた写真は、私が関わっているチーム「湘南台冬将軍」のコスプレ部隊のものでした。
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