学年通信文学「環境は人に意志を抱かせ、その意志が未来を切り拓く」

学年通信を担当しています。

かれこれ3年目。もう2年目の後半くらいからは、私が好き勝手にいろいろと書いてきています。過去にはこんな記事も書きました。

期せずして最後になった学年通信に「担当者が書きたいことを書くコーナー」を載せた

学年通信への文筆 – 「お互いを分かり合い、信頼し合う方法 – #BlackLivesMatterから」

学年通信文学「修学旅行で泣いた私」

そして、2学期のスタートに寄せて、そんなに長文を書かなくてもいいのに、筆が乗ってしまったのでついつい長い文を書いてしまいました。国語の長文問題を解かざるを得ない生徒たち向けの、読解トレーニングの一種だと自分に言い訳をして、いつも長く書いてしまいます。今回はその全文を、皆さんに共有しようと思います。


勉強とは「つとめて、つよくなる」と書きます。すると、どこか頑張らなきゃならない気がして、おっくうになると思います。生徒の皆さんのなかには「なんかしんどいな」と思う人もいるでしょうし、「勉強」が仕事である教師もそう思う部分がないわけではありません。出校日が中止になり、勉強しなくてラッキーと思った人もいるでしょうが、他方で不安を抱える人もいたかもしれません。先生たちは心配でした。些細なことでも、聞かせてくださいね。

さて、1日だけの出校日の翌日、8月24日(火)は、東京パラリンピックの開会式でした。観た人はどれほどいたでしょうか。職員室でも翌日話題になりました。「はるな愛さんがいたね」「布袋寅泰さんのギターがよかった」など。多くの出演者は公募で選ばれたそうで、なかでもメインとなる演目「片翼の飛行機の物語」の主人公を務めた和合由依(わごうゆい)さんも、母親が新聞記事で見かけた「開会式出演者募集」の知らせを見せられ「出てみたら?」と背中を押してもらえたことがきっかけで応募したそうです。最初は「無理だよ」と思ったそうですが、「落ちても人生経験になる」と応募を決意し、面接では志村けんさんのギャグ「あいーん」を見せつけたそうです。

パラリンピック開会式のコンセプト(総合の授業でもなんども出てきましたね)は、「パラエアポート」。世界各国から選手たちが集まる空港を表現するとともに、風を受けて自ら飛び立つ、ということを表現するものでした。筋の通った演出は、世界中から絶賛されました。そのメイン演目である「片翼の飛行機の物語」はこんな内容です。

片方の翼しかない小さな飛行機。パラエアポートの周りでは、サイズ・機能がさまざまな飛行機が飛び交う中、その小さな飛行機は、なかなか飛べずにいました。周りの飛行機たちも「あなたなら飛べる」と励ましますが、一歩を踏み出せないまま。そんななか、エアポートを飛び出すと、ぎらぎら輝くデコレーショントラックに出会います。デコトラとの会話や、トラックの中にいる仲間たちから勇気をもらい、最後にはデコトラが照らす夜の滑走路と、仲間の手拍子を受けて、滑走路を自ら走り、大空へ飛び立ちました。

この主演を務めた和合さんは、現在13歳。小学校のときから吹奏楽部に入り、現在は生徒会役員も務めるほど、なんにでも挑戦をする性格の彼女は、先天的に下半身と左手に障害があり、ふだんは電動車いすで生活をしています。しかし彼女は、本番の演技全てを電動でない車いすを使い、自らの腕の力で演じ切りました。ラストの滑走シーンも、20mの距離を走り切りましたが、当初は周りが「後ろから押そうか?」と言っていたそう。しかし、共演する仲間たちが、全力で自らの演技をぶつける様子を見ながら、「自分から走りたい」と宣言。学校では動かしにくい左手を意識的に使うようにし、普段の生活を電動から手動の車いすに切り替えたそうです。

パラアスリートや開会式の出演者の多くは「障害者」ですが、国際放送ではdisabilitiesと表され、直訳すると「できないこと」を意味します。パラリンピック委員会は #WeThe15キャンペーンを始めましたが、世界の人口の15%ほどである「障害者」は、もはや少ない数とは言えず、むしろ普通だと言っています。もっといえば、「できないこと」があるのは、「障害者」でも「健常者」でも同じこと。パラアスリートたちは、そのdisabilitiesを、道具で体を拡張したり、ルールを自分たちに合わせたり、サポートする仲間を得たりして、「できる」に変えて、自らの限界に挑戦をしています。

生徒のみなさんも「できない」と思うことは多いかもしれません。でも、周りが挑戦する姿に影響を受けた「片翼の小さな飛行機」は、自らの意志で飛ぶことができました。今の皆さんにとって、「できない」を補い、未来を切り開くのは、「つとめて、つよくなる」という意志と、互いを刺激し支え合う気持ちなのかもしれません。

いよいよ進路決定が迫る2学期。自分のこと・周りのこと、その両方を、より良いものにしていきたいですね。


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